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    ハードルール

    • 2015.03.25 Wednesday
    • 14:24
    2012年3月8日 「元気一杯」―呉服町

    前日に来ていたのです。しかし既に終わっていたのです。だがぼくらはほっと溜め息をついて、なにかの捕縛から解き放たれたような気さえしていたのです。何故ならここ「元気一杯」は日本でも有数の「客に厳しいラーメン店」なのだから。

    この店には鉄則がある。従わない者は、たとえ食べている途中であっても追い出されてしまう。基本的に一見さんお断り(ルールをわきまえた者のみということだろう)。そして携帯電話の使用禁止、撮影禁止、高菜をラーメンより先に食べるのもラーメンにすぐ入れるのも禁止、まずはスープから飲む…など(「など」としたのは、それが明文化されている訳ではなくあくまで民間伝承であり、他にもあるかもしれない余地が残っているからに他ならない)。概ね常識的なことではあるが、そう釘を刺されると当たり前のことでも緊張を強いられる。むしろそれを犯してみたいような衝動も沸き上がってきて、理性と一戦交えることになる。

    錦糸町にある取材拒否の中華料理店では、撮影すると追い出されると聞き、それだけで「バッグの中のデジカメが転がり出て誤解されるようなことになったら…」と戦々恐々としていたものである。

    上にあげた鉄則の他にも、店内をキョロキョロ眺めていてはだめだとか、あまり喋っていてはだめだとか、そんな報告も散見される。どこまで真実かは知らないが、これは何も噂ばかりではない。知り合いの店主が実際にここで追い出されている。彼は先に麺を啜ったのかラーメンを撮影したのか、ラーメンがまるまる残っている段階で「帰ってください」と食事を拒否されてしまった。懲りない彼は数時間後、変装用に買ったサングラスをかけて再入店を試みたのだが、瞬時に見破られ「さっきの人ですね。帰ってください」と素気無く追い返された。それはそれで面白い話だが、さりとてその故轍は踏みたくない。

    知らなければ通り過ぎてしまう外観。看板も暖簾も、飲食店と示すものが一切ないのだ。室外機の上にバケツが出ていたら営業中の印。それだけである(現に食後、店を出ると近くにいた工事現場の人から「あのー、ここって何なんですか?」と尋ねられることとなる)。

    前日に店頭にいた女性店員さんは、店の噂とはほど遠く、とても明るく対応してくれた。なかなかお綺麗な方で常に笑顔、高くてかわいらしい声が印象的。それで気が楽になったのもあるが、油断はできない。
    「お、バケツ出てるじゃないですか」
    「…バケツがピンクじゃないっすよ。これはやってない印じゃ…」
    「いや待った。様子を見よう」
    「ちょっと検索してみますか」
    斯くして今は水色のバケツに変わっていただけのことであり、あまさんを筆頭に我々は川口浩探検隊シリーズよろしく、入店を果たすのである。昨日の女性がエプロン姿で我々を迎えた。入って右側にカウンター、左に数席のテーブル。奥に厨房だ。我々は厨房から最も遠い、入口付近に陣取る。厨房の店主らしき男性も笑顔で声をかけてくる。思ったより若い。「普通のラーメン!!」を三つオーダーした。ふう、ともかく後は待つのみ。

    テーブルの上には、丼に入った高菜がある。堆く盛られた高菜「だけ」がある。目に止まるものがそれしかないのだ。その高菜の威容から視覚を通して訴えてくる味の引き。それを煽り立てるように突き刺さる菜箸の角度57度。絶妙なるアフォーダンスがこちらの手を疼かせる。なんの罠だ。

    やがて「普通のラーメン!!」が運ばれて来た。泡立つ水面に、葱、キクラゲ、チャーシュー。なるほどいい顔、そしていい香り。「スープからお飲みください」と言われる。その通りにすればいいだけだ。そこにトラップはない。レンゲをとり、スープを運ぶ。
    「こっ……これは旨い!」
    思わず顔を見合わせる三人。完全に目と目で通じ合う。クリーミーで骨っぽい。旨味とコクが、重さやクドさになってない。平塚の「麺肆 秀膽」で感じたようなバランスの良さ。膨れたはずの腹に、いとも簡単に収まっていく。熟成らしいややモソっとした麺には賛否あるらしいが、わたしはまったく構わない。チャーシューも美味である。博多はワンコインが普通とはいえ、これで600円というのはとても安い。

    中盤過ぎたあたりで高菜を入れれば、これまでの高菜が激辛とは呼べなくなるような鬼の辛さ。しかしスープはさほど壊れず、むしろ辛さによって味覚の覚醒を促すような味わい。思わずもう一度高菜を投入。
    「えっ?またいくの?!」というふたりの視線にハッとするも、そ知らぬふりで食べ続ける。結果、あまさんとわたしは五軒目にもかかわらず、汁  完 であった。

    三人は満足して車に戻る。わたしは車内で記憶を頼りにスケッチを。ラーメン、高菜、店内、女性店員さん。

    元気一杯
    元気一杯

    これだけのラーメン、漫画読みながらとか電話しながら、箸を止めて無駄話をしながら…では非常に勿体ない。食事は自由にするもの、ではあるが、食事にすらなってない輩に閉口することもある。ならばこんな店が少しくらいあってもいい。全然いい。

    普通のラーメン!! 600円

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